2025/12/18 22:37

「大好きなアイドルの誕生日に、とびきり似ている似顔絵をプレゼントしたい」 「憧れのアニメキャラの世界に入り込んだ自分を描いてほしい」
そんな熱い思いを持ってリクエストしてくださるお客様に対し、私たち似顔絵師が「申し訳ありませんが、それは描けないんです」とお伝えしなければならない時、心の中では私たちも非常に心苦しい思いをしています。
なぜ、プロの似顔絵師は有名人やキャラクターを描くことができないのか。そこには、技術の問題ではなく、私たちがプロとして守るべき「3つの大切なルール」があります。
1. 肖像権とパブリシティ権:顔は「その人だけの財産」
芸能人やスポーツ選手の顔や名前には、人を惹きつける大きな力があります。これには法律で守られた2つの権利が深く関わっています。
肖像権: 誰にでも認められている「勝手に顔を公開されない権利」です。
パブリシティ権: 有名人の顔や名前が持つ「経済的な価値」を保護する権利です。
プロの似顔絵師が代金(技術料)をいただいて有名人を描く行為は、「他人のブランド力を無断で借りて商売をする」ことになってしまいます。これは、その方のこれまでの努力や事務所が築き上げてきた価値を損なうことになりかねないのです。
2. 著作権:キャラクターは「作者の分身」
アニメや漫画のキャラクターは、作者や制作会社の情熱と時間によって生み出された「著作物」です。
同一性保持権: 著作物には「勝手に形を変えられない」という権利があります。
似顔絵師のジレンマ: 似顔絵は、描く人の個性を乗せて「デフォルメ」するものです。しかし、キャラクターを自分のタッチで崩して描くことは、作者が大切にしている世界観を壊してしまうリスクを孕んでいます。
「好きだから描く」というファンアートの枠を超え、ビジネスとしてキャラクターを扱うには、公式なライセンス契約が必要です。それがない状態で描くことは、クリエイターとしての敬意を欠く行為だと私たちは考えています。
3. 「描かない」のは、あなたと作品を守るため
もしルールを破って制作した場合、困るのは似顔絵師だけではありません。
SNSへの公開リスク: 完成した絵をSNSにアップした際、権利元から削除要請が来たり、最悪の場合は訴訟問題に発展したりする可能性があります。
プレゼントが台無しに: せっかくの贈り物が「権利侵害品」になってしまっては、贈る側も受け取る側も悲しい気持ちになってしまいます。
お客様に安心して作品を飾り、誰かに見せ、一生の宝物にしてもらうために。私たちは「100%クリーンで、胸を張れる作品」だけをお渡ししたいと願っています。
似顔絵師も本当は描きたいんです
私たちがリクエストをお断りするのは、決して「描きたくない」からではありません。
似顔絵師には誰しも、影響された漫画家やアニメ、有名人がいます。
憧れの絵や、好きな絵を模写することは本当に楽しい作業です。
だから、許されるのであれば似顔絵を一緒に描きたい!
でも、プロである限り、守るべきルールがあります。
ぜひ、似顔絵のプレゼントをご検討の際には、権利を守りながらも「想い」を形にする方法を、一緒に考えていただければ幸いです。
